2015/12/20

基本を忠実に。

新年早々に事業用操縦士の試験を控えて勉強に勤しむ毎日です。
さて、みなさんいかがお過ごしでしょうか。


今回はあまり楽しい話題ではないですが、ここ最近のグライダーにまつわる
インシデントについて、いくつか考察しようという記事です。

長いので、航空関係の方以外はスルーしてください(^^;;

逆に関係者には、拙い文章で恐縮ですが、これを機に考えてもらいたいですね。


【東大 Discus (JA219F) 着陸失敗】
着陸に向けてギアを降ろそうとしたが、ギアをロック位置にセットすることができず
その対応に気を取られて着陸失敗。RWに突込み、ポーポイズし機体は風防が大破。
胴体もかなりの損傷を受けた模様。不幸中の幸いはパイロットが無傷だったこと。
原因は、シート調整せずに飛行したことでギア操作ができなかった事と見られる。

非常にお粗末なインシデントですね。いくら経験が浅い学生とはいえ酷い。
機体諸元や注意点も理解できていないし、根本的に準備もせずに飛ぶとは言語道断。
"形式的に"ライセンスを持っていたとしても、これではただの紙切れですね。

ここで言えることは、準備を怠っては行けないということ。いくら急いでいても。
「準備を整えてから飛ぶ」パイロット(機長)としては当然の義務です。

加えて、知識が無さ過ぎる。もし、飛行中に何らかの要因でギア操作できない場合、
ギアアップした状態で着陸すればいいだけ。そうすれば大事にならなかったはず。
※滑空機は、ギアを上げた状態で着陸しても問題ない構造になっている。(耐審)



【朝日クラブ ASK-13 着陸失敗(場外着陸)】
赤城山から関東平野に吹き下ろす「赤城降ろし」が吹き、強い北風での飛行。
ASK-13でピスト横を250mで通過(通常通り)したが、第3旋回を終えたときには、
通常の倍の距離(第2RWの中盤近傍)まで風下に流されていた。
第4旋回終了時には120m(通常より-30〜-50m)で、通常の着陸プロセスをとれず、
RW手前に場外着陸をした。
この機の機長は社会人の方、後席には教育証明を持っている操縦士も同乗していた。

この件については、3つの見方ができる。

(1)機長の操縦・判断ミス
これは1番の問題であることは間違いない。強い北風(追い風)を受ける状況である
ダウン・ウィンド・レグで大きくルートを外れるというのは、もはや判断ミスの一言
では片付けられない操縦士の失態。予期しない状況による失敗は判断ミスであるが、
容易に予期できる状況を想定していないのは、ミスでも何でも無い。

(2)同乗者は疑問を感じなかったのか
2つ目に思うのは、同乗していた操縦士が通常の手順を逸脱していることに疑問を
感じなかったのかということ。いくら機長でなかったとはいえ、同乗者として助言
することができなかったのか。素人であれば仕方ないが、教官であって尚更に疑問。

(3)運行管理
最後に運行管理が飛行の異常を早期に見つけられなかったこと。
このファクターを責めるのは少し難しいが、1%でも危険の芽を摘むという意味では、
運行管理体制にいささか綻びがあったのかもしれない。




どちらの件についても関係者揃って意識を改めること、対策することは不可欠だが、
1番に訴えたいことは、パイロットとして責任をもった飛行をするということ。
しっかりと「準備」さえしていれば防げたことであるし、それを行わなかったのは
其々の機長の過失というほか無い。

これを教訓に、「準備」には一層の注意を払うことを啓発したいものです。

長々とグライダーについて書いてしまいましたが、最近あまりにも酷いミスが
増えている気がしてならないので。お付き合い頂きありがとうございました。

自分自身も、今一度気を引き締めて空を飛びたいと思います。